シニア犬にはどんな食事を与えるべき?
どんな食事を摂るべきかは犬によって異なり、シニア犬の場合は特に異なります。ある犬が長生きできるかどうかを左右するのは、単純に日々のお世話や遺伝によるもの、または運が影響してきます。しかしそれ以外にも全ての犬に共通する基本的な要因があります。
シニア犬の消費カロリーはどれくらい?
シニア犬に食事を与える際に困ってしまう問題の一つに、カロリーがあります。人は年を取ると動きが少なくなりますが、犬の場合はすべての犬がそうとは限りません。ただ、代謝率の変化によってカロリー燃焼量が減ったり、蓄えられる脂肪の量が増えたり、といったことは起こります。最近の研究によって、同じ体重を維持するのに必要なエネルギーを成犬と若犬で比べると成犬の方が20%少ないことが明らかになっています。 シニアに差掛かった犬は、 脂肪とカロリーが控えめな食事を与えることが望ましいと言えるでしょう。また、鶏・牛・豚・羊等の肉、魚、乳製品に含まれるアミノ酸から成るビタミンの為の化合物Lカルニチンには、エネルギーを生むための脂肪燃焼を助ける働きがあることも研究から分かっています。
ただし事はそう単純ではありません。
あなたの周りの大抵の超高齢者は瘦せているのではないでしょうか。犬についても同じことが言えます。高齢から超高齢にさしかかると体重の増加は止まり、体重が減ってくるので必要カロリー量は事実上増えてくるのです。こういう犬は、おそらく嗅覚や味覚の低下と一緒に食欲が減り、噛むことや呑み込みも難しくなってきます。こんな場合、脂肪分の多い食事は犬にとってより美味しく、より多くのカロリーを得る事ができ、たんぱく質の効率をアップさせるかもしれません。
そんな訳で、シニア犬には、それぞれのタイプに応じた食事が必要なのです。
シニア犬のタンパク質と脂肪の必要量は?
たんぱく質の量を増やすと筋肉の維持につながります。でも腎臓の負担を増やすから老犬にたんぱく質は良くないのでは?
いいえ、1940年代の哺乳類の研究からそう言われるようになっただけなのです。犬は進化によってラット(実験用のねずみ)より多くの肉やたんぱく質を摂るようになりました。後年の研究によってたんぱく質が腎臓に悪影響を与えることはないことが明らかになり、たんぱく質は老犬には良くないという説は覆されました。
最近は老犬にはより多くのたんぱく質が必要であると示唆するエビデンスも示されています。2歳と13歳のビーグル犬のたんぱく質必要量を比較した研究によると、シニア犬の方が少なくとも50%多く必要となりました。
たんぱく質は老犬にとって大切な栄養素です。運動をしていても老犬は筋肉量が減りがちで、それに伴い蓄えられるたんぱく質量も減ってきます。筋肉繊維やたんぱく質貯蔵量の減少は免疫システムを損ない、外傷、感染因子、ストレスに対処する体の能力を低下させる可能性があります。また、たんぱく質貯蔵量が減ると体内のアミノ酸量が減って繊維の回復やエネルギー代謝にも支障が出てきます。老犬の食事は最低でも25%の良質のたんぱく質を含むものでなければなりません。
あなたの老犬の体重が増えているようなら、たんぱく質含有率は従来と同じで、カロリーはより少なく、Lカルニチンが補充されているフードを与えましょう。目立った体重増加がないようなら、たんぱく質とヘルシーな脂肪の含有率は従来とと同じで、Lカルニチンが補充されているフードを与えまょう。
シニア犬に必要な繊維の量はどれくらい?
繊維含有量が高い老犬用フードもあります。大抵は減量を助けるため低カロリーになっています。ただ、超高齢犬にはおそらく減量の必要はないということを覚えておきましょう。また、繊維はいくつかの必須栄養素の吸収を妨げることがあります。セルロース系食物繊維は発酵しにくく、食物に含まれる他の栄養素の消化吸収率を大きく低下させるのです。
しかし繊維にもその役割があります。老犬に多い便秘を防いでくれますし、年を取ると難しくなってくる血糖調整にも役立ちます。従来からセルロース系食物繊維はドッグフードに用いられてきましたが、最近の研究によって、トマト果肉やアルファルファに含まれる穏やかな発酵作用を持つ繊維を組み合わせて与えると、血糖調整や栄養素の消化がさらに上手く行われるようになることが分かってきました。
シニア犬にミネラル分は必要?
私たちは年を取ると食事は塩分控えめにするようにと言われます。これは犬にはあまり当てはまりません。人は犬より多くの塩分を摂りがちで、結果犬よりも高血圧に悩まされることが多いのです。市販されている大抵のドックフードは、犬の必要塩分量を上回る塩分を含んでいます。犬だって人と同じように少し塩分を含む食べ物の方が好きだからです。 とはいえ、心臓や腎臓に問題 をかかえる犬の食事は塩分控えめにする必要があります。心臓や腎臓の機能が低下している場合、食事から摂った塩分の排泄が難しくなることもあります。塩分ゼロではなく0.35%程度まで落とすことはどんな老犬にとっても良いことでしょう。
少なくとも適当な量のカルシウムを含むバランスの良い食事を与えられてきていれば、大抵の犬は人と違って骨粗しょう症にかかることはないようです。従って市販のドッグフードを食べている犬の場合、それ以上にカルシウムを補う必要はありません。
腎臓疾患等の問題による高頻度の排尿や、心臓疾患用の利尿剤が原因で脱水が起こることが多いため、老犬は脱水になりやすい傾向があります。たくさんの水分を取らせるため、新鮮な冷たい水をいつも飲めるようにしておきましょう。
こんなふうにしていれば、あなたのシニア犬もきっと楽しく健康に長生きすることができるでしょう。